摂食障害と蘭 Eating Disorder Ran

[書評・評論]「『生存者』と呼ばれる子どもたち 児童虐待を生き抜いて」宮田雄吾 著

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書評

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宮田雄吾「『生存者』と呼ばれる子どもたち 児童虐待を生き抜いて」角川書店

私が図書館で借りて読んだのは、
2010年出版の、表紙が施設と思われる建物の写真のほうでしたが、同じ角川から2014年にイラストの表紙のものが出ているようです。内容が多少更新されているかもしれないので、どちらかというなら出版年の新しい、イラストが表紙のものをオススメします。

この本は著者が2003年に開設した情緒障害児短期治療施設「大村椿の森学園」に集う子供たちをめぐるノンフィクションです。
情緒障害児短期治療施設とは?その説明を以下に載せます。

『情緒障害児短期治療施設とは、児童福祉施設の一種である。虐待や育児放棄の疑いがある場合、児童相談所がその家庭の調査を行なう。そしてそのまま放っておくと子どもに危険が及ぶ可能性が高く、家族を分離することが望ましいとなった場合、子どもは主に次の4つの場所のいずれかで暮らすことになる。「里親」「児童養護施設」「児童自立支援施設」、そしてとりわけ心に深い傷を負った子どもたちが暮らすのが「情緒障害児短期治療施設(情短)」だ。
情短は原則として18歳まで入所できる。児童精神科医や心理セラピストといった医療の専門スタッフと子どもたちの生活全般を支える児童指導員がチームを組んで心のケアにあたり、子どもたちが社会で安定した生活をできるよう、治療を行なっていく。』

学校でいじめにあったり、事件事故に巻き込まれて社会生活に不適応を起こす子供も対象ですが、近年特に問題として取り上げられることの多い、家庭での児童虐待。本来なら愛情を注いでくれるはずの親から、暴力やネグレクトなどの不適切な養育を受けてきた子供たちがその後どんな後遺症に苦しめられるのか…虐待の現場から逃れれば解決するわけではないのが、この問題の根深いところ。
施設の子供達をバイキング形式のレストランに連れて行くエピソードがあるのですが、幼い子供達は胃の許容量をはるかに超えた食事を貪ってしまうのです。その結果、嘔吐してしまい、トイレやレストラン店内を汚してしまうため、お店側から苦情が相次ぎ連れていけなくなってしまったとか。これは摂食障害の症状とは少し違うのかもしれませんが、愛情に飢えた子供たちがせめて代わりに食べ物をめいっぱい貪りたい、食べ物で身体を満たすことで、少しでも空虚な気持ちを埋めたい、そんな言葉にならない心の叫びの表れのような気がして、読んでいて切なくなりました。
摂食障害の文献を読んでいてもその原因の一つとしてアダルトチルドレン(最近の毒親もそうですね)との関連性がよく取り上げられますが、親から満足な愛情をかけてもらえなかったことからの愛情飢餓から、食べ物で満たそうとする行動に及ぶプロセスに、共通するものを感じました。
摂食障害について直接書かれた本ではないですが、摂食障害当事者である私たちだからこそ、何か得るもの学べるものがある一冊だと思い、紹介してみました。

著者の宮田雄吾氏は1968年生まれの精神科医で、他にも絵本やティーン向け、子どもの症状に悩む親向けにやさしく書かれた著書があります。「14歳の精神医学」など、専門書というよりは平易にやさしく書かれたものが多いので、若い世代の方や摂食障害〝初心者〟にはおすすめです。

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千早茜「西洋菓子店 プティ・フール」文藝春秋

こちらは小説です。著者には確か直木賞候補作になった作品もあるし、この本も最近週刊誌の書評に取りあげられていたので、書店の文芸コーナーに行けば置いてあるはず。
下町の洋菓子店を舞台にした6つの物語からなる物語ですが、その店を訪れる客の中に、摂食障害の登場人物が出てきます。恵まれた結婚生活のはずだったのに、夫の浮気を知り、情緒不安定に。不自然なほどの大量の洋菓子を買い占め、一気に食べて吐いてしまう。束の間の恍惚感。手の甲にできた吐きダコ…摂食障害あるあるエピソードが綴られています。特別おかしなこととして書かれているわけではなく、摂食障害も自然に日常風景のように?描かれることが増えてきたのかなーなんて思いながら、小説としては純粋に面白く読みました。

執筆者

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名前:むちむち
年齢:1979年生まれ
性別:女

16歳頃から過食が始まりました。ずっと吐かない過食でしたが、2011年の暮れ頃に吐くことを覚えてしまい、そこからは毎日過食嘔吐。ひどい時は一日4〜5回食べ吐きを繰り返していましたが、現在は一日一度に落ち着いています。
私はダイエットがきっかけではなく、幼少時に受けた性虐待などが原因だと今のところ診断されています。摂食障害の他にもPTSD、うつ病、解離性障害、身体表現性障害、衝動制御障害など…色んな診断名がつけられてきました。過食が始まった頃から精神的にも不安定になり、自殺未遂を繰り返した時期もありましたが、今は短時間ながら働けるところまで快復しました。
本の虫で、とにかく数だけは読んでいるので、主に摂食障害に関する本の感想などを書くことなんかで皆さんとつながっていきたいなと思っています。よろしくお願いします!詳しくはコチラ

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はじめまして。蘭と言います。

1983年生まれ、現在は旦那さんと娘と息子の4人家族で神戸に住んでいます。

その前までは、5年の過食嘔吐、嘔吐を辞めて完治するまで9年。全部で14年かけて摂食障害を克服しました。

おこがましいですが、その経験を活かし、渦中にいる方のお手伝いを旦那さんと2人でしています。

お手伝いと言っても、専門家や医師ではないので、カウンセリングや、診察など出来ませんが、その他の方法でいろいろやっています。つづきを読む。


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