摂食障害と蘭 Eating Disorder Ran

[書評・評論]「摂食障害という生き方―その病態と治療」瀧井 正人 著

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書評

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瀧井 正人「摂食障害という生き方―その病態と治療」中外医学社

専門書で3000円以上する文献なので、私は迷わず図書館で借りて読みました。2014年に出版されたものです。
著者は長年摂食障害の臨床に立ち会ってきた心療内科医で、ご自身が実際に入院治療にあたった摂食障害の患者さんに、具体的にどのような治療を施したかが詳細に書かれています。『行動制限を用いた認知行動療法』という療法を実践されており、この著書のなかでその全貌が初めて明らかにされています。特に拒食症の患者さんに有効であったようで、毎日の体重の変移から一つ一つの言葉のやり取り、患者さんだけでなくそのご家族や他の治療者らとの対話なども詳細に記述されているので、これから入院治療を考えている方に参考になるかもしれません。ただ、著者も言われているとおり、摂食障害の治療に当たる医師が皆同じ考えや治療法を用いているわけではありません。そもそもの治療に対する考え方が医師によってかなり異なる上に、摂食障害の患者さんは症状の「個人差」が大きく、一人一人まさにオーダーメイドの治療法が求められるもの。薬物で治療できるのでもなければ、既成のガイドラインに沿う通り一遍の治療で治るものでもないゆえに、摂食障害に本格的に取り組む治療者は決して多くなく、一定の体重増加や抑うつ・不安の一時的な軽減等、表面的な治療対応ですませている臨床家が少なくないそうです。そんな事情のなかで摂食障害に正面から取り組む著者の苦悩や試行錯誤のようす、治療者としての在り方までも学べる一冊だと思います。

最近何冊もの摂食障害関連本を読み進めて行く中で敢えて今回この本を取り上げたのは、今朝のニュースでたまたま著者がうつっていたからです。ニュース自体は北九州の女子刑務所に関するもので、近年収容されている精神障害などの刑以外の治療や対応が必要な受刑者の中で、問題視されているのが摂食障害の患者が増えているというトピックスでした。収容されている摂食障害患者のうち8割は窃盗、つまり万引きで逮捕された女性たちで、特に過食嘔吐で大量の食べ物が必要となるうちに、経済的に逼迫してしまったり、ただ口に入れて吐いてしまうものにお金を払うのは馬鹿らしい、もったいない…という考えから食べ物を万引きして捕まる人が増えているというのです。逮捕されても摂食障害の症状が重篤な場合はその治療もしなければならず、ニュースでは拒食のためにやせ細った受刑者がエンシュアリキッドのような栄養経口剤を与えられて飲む姿などが映し出されていました。
著者、瀧井氏はその摂食障害者の万引きに至るまでの思考経路なども説明されていましたが、「摂食障害の患者さんたちは摂食障害という症状に逃げている。生きていくうえでの辛さ苦しさを、過食や拒食という形で表すことで、生きづらさをなんとか回避している。だから治療は非常に難しいです」というようなことを話されていました。
本で読んだ感じとは違う厳しさを感じるコメントでした。ニュースのテーマ性も影響していたと思いますが、うーん、短いニュースの中でいろいろ考えさせられました。
この摂食障害と窃盗、万引きに関しては、河村重実著、竹村道夫監修「彼女たちはなぜ万引きがやめられないのか? 窃盗癖という病」(飛鳥新社)に詳しいのですが、この本にも思い入れ?がありまだうまくまとまらないので、いずれまたじっくり書けたらいいなと思っています。

ちょっと間が空いてしまいましたが、とりあえず今回一冊紹介できたことで私自身も少しホッとしています。これからも不定期になるとは思いますが、ぽつぽつ気長にやっていきたいと思っていますのでよろしくお願いします。

さて、少し前に蘭ちゃんの旦那さん経由でリクエスト本を何冊か拝聴しました。しっかりご連絡受け取りました、ありがとうございました。タイトルだけだったので、もしそれらをリクエストされた理由などが分かればありがたいです。自分も読んだけど感想が聞きたい、とか、自分は未読だけど評判を聞いたのでどんな内容か知りたい、とか。既に読んだものも複数あるのですが、より優先的に書いて欲しい本などあれば、私も頑張って読んで書きますので、遠慮なくまたご連絡お待ちしています。

執筆者

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名前:むちむち
年齢:1979年生まれ
性別:女

16歳頃から過食が始まりました。ずっと吐かない過食でしたが、2011年の暮れ頃に吐くことを覚えてしまい、そこからは毎日過食嘔吐。ひどい時は一日4〜5回食べ吐きを繰り返していましたが、現在は一日一度に落ち着いています。
私はダイエットがきっかけではなく、幼少時に受けた性虐待などが原因だと今のところ診断されています。摂食障害の他にもPTSD、うつ病、解離性障害、身体表現性障害、衝動制御障害など…色んな診断名がつけられてきました。過食が始まった頃から精神的にも不安定になり、自殺未遂を繰り返した時期もありましたが、今は短時間ながら働けるところまで快復しました。
本の虫で、とにかく数だけは読んでいるので、主に摂食障害に関する本の感想などを書くことなんかで皆さんとつながっていきたいなと思っています。よろしくお願いします!詳しくはコチラ

リクエスト本

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最後に

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はじめまして。蘭と言います。

1983年生まれ、現在は旦那さんと娘と息子の4人家族で神戸に住んでいます。

その前までは、5年の過食嘔吐、嘔吐を辞めて完治するまで9年。全部で14年かけて摂食障害を克服しました。

おこがましいですが、その経験を活かし、渦中にいる方のお手伝いを旦那さんと2人でしています。

お手伝いと言っても、専門家や医師ではないので、カウンセリングや、診察など出来ませんが、その他の方法でいろいろやっています。つづきを読む。


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