摂食障害と蘭 Eating Disorder Ran

[書評・評論]「クレイジー・ライク・アメリカ: 心の病はいかに輸出されたか」イーサン ウォッターズ(著)

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書評

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イーサン・ウォッターズ
「クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか」
紀伊國屋書店

蘭ちゃんの旦那さんに紹介していただいた本です。出版された二年前に結構書評が書かれたりして注目された本であったにもかかわらず、今まで読み逃していました。読むきっかけを与えてくれた旦那さんに感謝です。

さて、第一章「香港で大流行する拒食症」。「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」の定義によると、拒食症患者は「異常な低体重を頑なに維持」し、「体重が不足している場合でも、体重が増えること、または肥満することに対する強い恐怖」を覚えるなどの歪んだセルフイメージを持っている、とあります。私の拒食症に対する認識も概ねこれに沿っています。

痩せ礼賛のメディア思想に影響を受け、少しでも痩せている方が美しいと思い込み、痩せに固執し、太ることを恐れるうちに摂食障害の罠にはまりこむ。しかし、香港の拒食症患者にはこの欧米式のDSMに該当しない患者が多いことを摂食障害の研究者、李誠医師は発見します。「貧しい家庭の育ちで学校の成績も悪いことが多く、欧米の患者によくみられる優れた道徳観にも乏しかった」。

私はここを読んで、数年前に見たテレビ番組を思い出しました。中国の田舎に住む十代の少女が、ものすごい量の食事を摂るが、食べたそばからすべて吐き出してしまうので痩せて体力もなく、一日中食べる以外はじっとしている、という内容でした。少女は父親と二人暮らしで、山奥のど田舎に住んでいる。家は貧しく、父親は少女の食い扶持を稼ぐだけで必死。父親も少女自身もなぜそんな状況になってしまったのかよく理解しきれていないようでした。太るのが怖いから吐いているようでもなかった。

その少女の場合も、この本で指摘されている『欧米の大衆文化のグローバル化による影響が最も強いと考えられる地域ではなく、辺鄙な村の出身であるケースが大半だったことである。』というところにあまりにも合致していたので思い出したのでした。同じ中華圏だし、何か関係がありそうです。

近年世界進出が目覚ましい中国という大きな国(厳密にいえば台湾は中国とは別の国なのかもしれませんが、文化圏という意味合いでは韓国と朝鮮が朝鮮半島という同地域に属するのと同じように、同じエリアに属するという考え方でここでは書いています、この場合社会的思想は深く考えません)の中でも、台湾は国際的な都市の一つだし、欧米のファッションや大衆文化に染まりきっている若い女性はたくさんいるのに、拒食症患者の多くは「DSM」のマニュアルに沿わなかった。拒食症の原因は世界共通のものが一つだけあるわけではないのか。ひょっとすると、まだ誰も考えたことのない理由があるのかもしれない・・・

いやー、とても興味深い内容でした。最終結論は本をお読み頂くとして、DSMなどの診断基準を過信することの危険性にも気づけたし、とても勉強になる一冊です。個人的には第四章「メガマーケット化する日本のうつ病」、語弊を恐れずに言えばめちゃくちゃ面白く読みました。メタボは危険!と散々煽っておきながら、実は「ちょい太でも大丈夫」だったとか、メディアも勝手だし医療関係者も製薬会社も根本は営利目的なのだなあとドライな考え方をせざるを得なくなったというか。。

摂食障害もいろんな角度からみるとこんなに奥が深くてまだまだ未知の分野があるのだなあと、更にその深遠性に気づけた一冊です。図書館にも精神医学の棚にきっと蔵書があると思いますのでぜひどうぞ。

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本のタイトルなど

執筆者

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名前:むちむち
年齢:1979年生まれ
性別:女

16歳頃から過食が始まりました。ずっと吐かない過食でしたが、2011年の暮れ頃に吐くことを覚えてしまい、そこからは毎日過食嘔吐。ひどい時は一日4〜5回食べ吐きを繰り返していましたが、現在は一日一度に落ち着いています。
私はダイエットがきっかけではなく、幼少時に受けた性虐待などが原因だと今のところ診断されています。摂食障害の他にもPTSD、うつ病、解離性障害、身体表現性障害、衝動制御障害など…色んな診断名がつけられてきました。過食が始まった頃から精神的にも不安定になり、自殺未遂を繰り返した時期もありましたが、今は短時間ながら働けるところまで快復しました。
本の虫で、とにかく数だけは読んでいるので、主に摂食障害に関する本の感想などを書くことなんかで皆さんとつながっていきたいなと思っています。よろしくお願いします!詳しくはコチラ

最後に

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はじめまして。蘭と言います。1983年生まれ、現在は旦那さんと娘と息子の4人家族で神戸に住んでいます。その前までは、5年の過食嘔吐、嘔吐を辞めて完治するまで9年。全部で14年かけて摂食障害を克服しました。このサイトでは、皆の摂食障害体験を共有するアンケート、摂食障害経験者によるコラム、自由に書き込める摂食障害のための掲示板を管理しています。