摂食障害に関する書籍や映画などの書評・評論をむちむちさんに書いていただいてます。他の書評・評論はコチラから(時系列順)
書評
曽根富美子
「曽根富美子傑作選 家族再生〜心理療法の現場から 」
ぶんか社コミック文庫
4年前、2011年に出版された漫画です。大きめの書店の検索機で「摂食障害」のキーワード検索したら出てきました。漫画やコミックにはかなり疎い私なので、作者の曽根富美子さんが一般的にどれくらい知名度がある方なのかも知りませんが、1958年生まれの女性、油絵作家でもあるみたいです。
内容紹介文は以下の通り。
急増する「子どもの心の病」その治療の現場から――不登校、摂食障害、暴力、ひきこもり、うつ……深刻さを増す子どもたちの「心の病」に一筋の光をもたらした「家族療法」の壮絶な治療過程を描く。表題作ほか、胸揺さぶる7話収録。
いやー、こんなにリアルに摂食障害を描いた漫画があったとは。一気に読んで、ちょっと呆然としてしまいました。
家族の中の誰かがうつや心身症などのこころの病気になったとき、症状を発した当人だけでなく家族である自分たちも病んでいる、だからその原因は家族の中にあるのではないか。家族の中の誰も加害者でも被害者でもないという捉え方。
家族内の因果関係から生じる悪循環を断ち切る対症療法、家族療法の現場を繊細な筆致で描いた作品です。
摂食障害を扱ったものは拒食症の中学生の女の子の家族を描いた第3話の「ダイエット」、過食嘔吐の中学生の男の子の家族を描いた第4話の「飽食の時間」の2つが収録されています。
「ダイエット」では家族全員が食卓を囲み、痩せ衰えた娘に必死に食事を摂らせようとする。「飽食の時間」では普段起きる家族間のやり取りの一コマを、敢えてシナリオに沿って繰り返し「演技」をし、果てには家族の目の前で実況中継のもと過食をさせ、そして吐かせ、拍手で終えるという凄まじい家族療法の舞台。実話を元にしたのか、と思うくらいのリアリティを感じました。
どの話もハッピーエンドで終わっているわけではなく、読者に問いを投げかけたまま終わっているような話もあります。でも家族全員が揃うことができた時点でこの療法の50%は成功と言える、という事実からもわかるように、今まで言えなかったお互いへの気持ち、心に溜め込んでいた不満や本音をさらけ合うことがどんなに難しく、でもそこにいかに重要なものがあるかということがひしひしと伝わってきます。
スマホでタイトル検索したらRenta!というアプリ?から無料で読むことができるようです。実際にこの家族療法をやろうと思ったら、家族の理解・専門医や病院などの環境・まとまった時間・覚悟・相当なエネルギーなどなどたくさんのものが必要だし、場合によってはリスキーな部分もあるかもしれない。でも漫画を読む分には誰も傷つかないし(笑)、ずっしりした読後感が得られると思います。楽しい気分にはなれないけれど、きっとそれぞれ感じるものがあると思います。ぜひ一読あれ。
執筆者
名前:むちむち
年齢:1979年生まれ
性別:女
16歳頃から過食が始まりました。ずっと吐かない過食でしたが、2011年の暮れ頃に吐くことを覚えてしまい、そこからは毎日過食嘔吐。ひどい時は一日4〜5回食べ吐きを繰り返していましたが、現在は一日一度に落ち着いています。
私はダイエットがきっかけではなく、幼少時に受けた性虐待などが原因だと今のところ診断されています。摂食障害の他にもPTSD、うつ病、解離性障害、身体表現性障害、衝動制御障害など…色んな診断名がつけられてきました。過食が始まった頃から精神的にも不安定になり、自殺未遂を繰り返した時期もありましたが、今は短時間ながら働けるところまで快復しました。
本の虫で、とにかく数だけは読んでいるので、主に摂食障害に関する本の感想などを書くことなんかで皆さんとつながっていきたいなと思っています。よろしくお願いします!詳しくはコチラ。
最後に
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