摂食障害と蘭 Eating Disorder Ran

[書評・評論]「それでも吐き続けた私」冨田香里著

摂食障害に関する書籍や映画などの書評・評論をむちむちさんに書いていただいてます。

書評

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冨田香里著『それでも吐き続けた私』講談社

蘭ちゃんの旦那さんからブログに書評を載せるお話をいただいた時に、真っ先に思いついたのが今回取り上げる本です。一番に紹介したかったのですが、中途半端な内容で載せたくなかったので三週間かかってしまいました。。ちょっと長くなってしまいましたが読んでいただけたら、そしてこれを機にこの作品を手にとっていただけたら嬉しく思います。

私が初めて読んだ摂食障害当事者の本です。1997年に出版されて、私が買ったものは同年四刷、当時多少は話題になったのかな。この本ほどの衝撃、いろんな意味で内容の濃い『摂食障害当事者本』にはその後未だ出会えていません。

当時、ただの食べ過ぎややけ食いとは全く違う、異常な食欲や食べたい!という抑制不能な衝動に困惑し途方にくれていた私。どうやら自分が『摂食障害』らしいとは分かってきたものの、まだ専門的な文献は今ほどないし、当時はどちらかというと数年前に宮沢りえさんの激やせが騒がれたりしていたこともあって、世間的には摂食障害≒拒食症って感じの認知度だったと思います。それに医学書でも過食≒大量に食べて吐く、って説明がなされているものが殆どで、吐かない(吐けない)自分は過食症ではないのだろうか、精神科を受診しても病院の先生は心の中では『この子はただの食べ過ぎ』と思ってるのではないだろうか・・・とずいぶん悩み苦しみました。

摂食障害の文献を求めていくうちに斎藤学(さとる)氏の事を知りました。蘭ちゃんのブログにつながっている方達には説明不要でしょうが、NABA(日本アレノキシア・ブリミア協会)を立ち上げた精神科医で、日本にアダルトチルドレンの概念を初めて紹介した、摂食障害をはじめとする嗜癖・依存症分野の第一人者です。著作も多くて、専門的な学術書だけでなくよしもとばなな、村山由佳、内田春菊、伊藤比呂美、トリイ・ヘイデン(敬称略、順不同)ら著名人との共著も多く、どれもおすすめです。

さて本題からかなり脱線してしまいましたが、今回の本はそんな斎藤氏の前書きから始まっています。はっきり覚えていないけれど、当時の私も斎藤氏の著作からこの本の存在を知ったのだと思われます。

この本では摂食障害でも過食症、過食嘔吐の症状に苦しんだ著者の生い立ちやその症状との闘いが綴られています。

著者の身におこった摂食障害の症状が、ありのままにリアルに、かなり詳細にさらけ出されています。でもある意味淡々と、というか、感情的にならず冷静に振り返られているように思います。

学業面でも優秀だった著者は進学、留学、就職、恋愛、結婚・・・と表面的にはとても堅実で充実した人生を歩んでいるように見えるけれど、その傍には過食嘔吐という、著者が言うところの『奇妙な儀式』がついてまわる日々。『過食嘔吐と追いかけっこの毎日』。一見ドライに語られているけれど、本当に壮絶で辛かっただろうなと思います。

外出先のトイレ事情を把握していたり、一軒で大量に買い食いできないから何軒もの飲食店をはしごしたり、友人知人に吐いていることを悟られないためにあらゆる手立てを尽くしたり・・・蘭ちゃんブログの『摂食障害あるある』じゃないけれど、それらの著述に『わかるわかる!』と自分にも思い当たる当事者の方はとても多いと思います。

これらの、できるならば隠したいような行動の逐一を、こんなにあけすけに、でも感情に左右されず粛々と語りおこすことってなかなかできないと思います。その勇気やエネルギーだけでも素晴らしいと思う。そして、こういった本にありがちな、こんな家庭に育ったせいで・・・とか、こんな辛い思いをしたから・・・みたいな、責任転嫁的な表現もなく卑屈になることもない文体から、著者の聡明さや摂食障害と向き合う真摯な姿勢が伝わってきました。

それは蘭ちゃんご夫妻にも言えることで、世の中の摂食障害で苦しむ人たちにとって彼らは希望の星!日常では摂食障害に直接関係のないひとたちにも、摂食障害とは嗜癖問題の一つ、自分ではコントロール不可能な症状(病気、疾患と言い切るのは少し不安があるのでとりあえずここでは敢えて症状という言葉にとどめておきます。)であること、甘えでもなく一番苦しいのは当事者自身なのだということ、まずそれだけでいいから理解してもらえるような世の中になって欲しいと願って止みません。

出版から20年近く経った今読み返しても色褪せ感の全くない作品です。文庫化もされています。

執筆者

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名前:むちむち
年齢:1979年生まれ
性別:女

16歳頃から過食が始まりました。ずっと吐かない過食でしたが、2011年の暮れ頃に吐くことを覚えてしまい、そこからは毎日過食嘔吐。ひどい時は一日4〜5回食べ吐きを繰り返していましたが、現在は一日一度に落ち着いています。
私はダイエットがきっかけではなく、幼少時に受けた性虐待などが原因だと今のところ診断されています。摂食障害の他にもPTSD、うつ病、解離性障害、身体表現性障害、衝動制御障害など…色んな診断名がつけられてきました。過食が始まった頃から精神的にも不安定になり、自殺未遂を繰り返した時期もありましたが、今は短時間ながら働けるところまで快復しました。
本の虫で、とにかく数だけは読んでいるので、主に摂食障害に関する本の感想などを書くことなんかで皆さんとつながっていきたいなと思っています。よろしくお願いします!詳しくはコチラ

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はじめまして。蘭と言います。1983年生まれ、現在は旦那さんと娘と息子の4人家族で神戸に住んでいます。その前までは、5年の過食嘔吐、嘔吐を辞めて完治するまで9年。全部で14年かけて摂食障害を克服しました。このサイトでは、皆の摂食障害体験を共有するアンケート、摂食障害経験者によるコラム、自由に書き込める摂食障害のための掲示板を管理しています。